皆さんは「インド英語」についてどんなイメージを持っていますか?
インド人が話す英語は、ヒンディー語と英語を掛け合わせ、”ヒングリッシュ”と呼ばれることもあり、実際アクセントやイントネーションが他の国で話されている英語とは少し違うイメージがあると思います。
しかし、実はインドは世界でアメリカの次に英語話者が多い国であること、また欧米などに比べると物価も安いことから、英語を学習している日本人の中で「インドへの転職」や「インドへの留学」が注目を集めつつあります。
今回は、実際にインド現地で日本人を中心に英語を教えている、アメリカ出身のCrystal先生に「ネイティブが考えるインド英語について」また、実際に日本人の生徒を教えてみて分かった「日本人が英語を上達するコツ」についても教えていただきました!

アメリカ出身の元ミシガン大学の教育研究員。7年前にインド・グルガオンに移住。2017年から、現在はインドに住むアジア及びヨーロッパ出身の外国人に英語を教えている。
ネイティブが考える「インド英語」とは?

ー日本人の多くは、インド英語はネイティブが話す英語とは違うイメージを持っていると思います。実際、英語ネイティブであるCrystal先生からみて、インド英語とアメリカ英語の間に「ギャップ」はあると思いますか?
「ギャップ」とまでは言いませんが、言語は常に文化に基づいているため、国によって大きな違いが存在すると思います。
私がよく生徒に話しているのは、文法的に正しい英語であっても、話し言葉では正しくない場合があるということ。
例えば、コーヒーは数えられない名詞なので、文法的に「a coffee」は間違いです。しかし、ほとんどのアメリカ人やインド人はカフェで「I’d like to order a coffee.」と注文すると思います。
文法的に正しいとされるものと、日常で使用される英語にはしばしば違いがあります。その点では、アメリカ英語とインド英語は同じです。
しかし、インド人が使う単語とアメリカ人が使う単語には少し違いがあると思います。インド英語は、アメリカ英語よりもイギリス英語がベースとなっています。
私がインドに引っ越した時は、アメリカでは一般的にあまり使われないですが、イギリスではよく使用される「keen」や「carry on」などの言葉に戸惑いました。その他にも、発音やアクセントにも違いがあると思います。
ー具体的に、インド英語の発音やアクセントは何がアメリカ英語と違うと思いますか?
先ほども述べたように、インド英語はイギリス英語に基づいています。
イギリス英語とアメリカ英語は、母音の発音に違いがあり、例えばイギリス英語では「r」をより静かに発音します。また、抑揚のつけ方も、イギリス英語とアメリカ英語の異なる点です。
インドには様々な言語が存在しており、インド人が話す英語は、それぞれの母国語に影響されています。インド人全員が強いアクセントで話すわけではありませんが、アクセントが強いほど理解するのは難しいと思います。
例えば、多くのインド人は「t」を「d」と発音し、「th」と同じ発音をします。これは、ヒンディー語の発音と似ています。「w」の音は、ほとんどのインド人にとって「v」の発音と同じです。これらの違いは、慣れると簡単に理解ができると思います。
また、インド人は速く話す傾向があり、これもインド英語を聞き取るのが難しいポイントの1つだと思います。
ー確かに、インド人は話すのが早く、強いアクセントだと聞き取るのが難しいです。日本人がインド英語に慣れるためには、どうしたら良いのでしょうか?
まずインド英語が難しいと思っているのは、日本人だけではありません。
インドに長い間住んでいる、ネイティブスピーカーの私でさえ、強いアクセントのインド人と電話で話している時は、英語を聞き取れないことがあります。
インド英語に慣れるためには、実際に強いアクセントで英語を話すインド人と直接話すしかありません。直接インド人と話す機会が増えるほど、理解ができるようになってくると思います。
ーCrystal先生から見ると、インドは英語学習に適している場所だと思いますか?
一概に「良い」「悪い」とは言えませんが、英語はインドの公用語の1つである為、もしインドに来ると、必ず英語に触れると思います。
しかし、インド人が話す英語は「教育」と深く関わっており、留学経験がある高学歴のインド人は英語を流暢に話しますが、逆に学校に通っていない人の中には、全く英語が話せない人もいます。なので環境によって、英語の使用頻度は変わってきます。
一方、アメリカやカナダなどの英語圏の国と比較すると、インドの物価は安く、英語を勉強する費用は非常にリーズナブルです。
日本人の英語上達のコツとは?

ー日本人を数多く教えてきたプロの英語教師の観点から見ると、日本人が英語を習得するコツは何かありますか?
ほとんどの日本人の生徒は「教科書英語」の知識を持っています。なぜなら、英語をコミュニケーションツールとしてではなく、学校の科目としてこれまで勉強しているからです。
なので、多くの日本人にとって大切なのは、「英語でのコミュニケーション方法」を学ぶことだと思います。下記の基本的なコツも参考にしてみて下さい!
- 完璧な文法を目指す必要はありません。英語を母国語とする人でさえ文法を間違えることがあります。
文法の正確さではなく、自分の考えを伝えることを意識してください。
これを意識することは、英語を第2・第3言語として使用しているインドではより重要だと思います。 - 自分の英語に自信を持つことは、英語でうまくコミュニケーションをとる為に非常に重要です。自分の英語に自信を持っている生徒は、劇的に英語のコミュニケーションスキルが向上します。自分の英語力を心配したり、英語についてストレスを感じるほど、ミスが増えると思います。英語の勉強についても考え直す必要があります。
- 英語はテストの科目ではなく、「コミュニケーションツール」です英語の教科書で勉強するだけでは、英語のコミュニケーション能力を向上させることはできません。英語をたくさん読み・書き・話すことで、英語はどんどん身についていきます。
ー最後に、英語学習をしている日本人に向けて、何かメッセージをお願いします!

英語を学ぶベストの方法は、英語漬けの生活を送ることです。なので、海外に留学したり、海外で働くことは、1つの選択肢だと思います。
ですが、海外に行くとしても何より大切なのは「しっかりと事前準備をすること」。
今までやってきたような教科書での勉強ではなく、オンラインで英語のレッスンを受けたりと、リスニングとスピーキングの練習をすることをお勧めします。
“The more you can use English in your everyday life the more prepared you’ll be to use English abroad.”
Crystal先生、ありがとうございました!