中国という巨大市場をアリババとJD.comに取られ、勢いはそこまで振るわなかったAmazon。
巻き返しを図ろうと狙っているのは、今後アジアで一番有望なeコマース(電子商取引)市場と言われている、インドです。
米Amazon.comを率いるジェフ・ベゾス氏は、eコマースの発展が目覚ましいインドに、約5800億円もの資金を投入することを決めました。
インドが秘めるポテンシャル
人口13億人のインドでは、成人の6%しかクレジットカードを所有していないものの、所有率は年間25%の割合で増えています。インターネットユーザーは4.8億人で、こちらも年間25%で増えているようです。(Forbesより)
また、Harvard Business Reviewによると、インドの人口の65%以上が35歳未満であること、所得水準が上がっていること、そして携帯電話の普及率が人口の80%と言われており、インド市場が秘めるポテンシャルは今後も膨らむと考えられます。
その一方でまだ黒字化していないAmazon India

しかし、インドを制すのは一筋縄ではいきません。
Amazonがインドに参入したのは2013年ですが、同国の事業はまだ黒字化していません。
というのも、インド国民の67%はインフラが十分に整っていない地域で生活していること、
インド国民の約35%しかインターネット環境を持っていないこと、
そして都市部ではクレジットカードを使えるところが多いものの、インド全体で見れば現金でのやり取りが今もなお主流であることなど、課題が多くあるからです。
インド市場を開拓する新しいビジネスモデルとは?

このようなインドの実情に対して、Amazonは今までのビジネスモデルを貫き通すのではなく、インド用のビジネスモデルを新しく構築することでインド市場を開拓しています。
Amazon Indiaがまず注目したのは、スマートフォン。小さな町の住民が使っているのは安価なスマートフォンです。
このようなスマートフォンは容量が少なく、従来のアプリだと落ちてしまうので、彼らのスマートフォンでも使えるようなシンプルなアプリを投入しました。
また、インド人に特化した商品を取り揃えました。
パンジャブ州でよく食べられているバターチキン風味のカレールーからインド中部で昔から使われているハーブの薬まで、という徹底ぶり。
それに加え、インドでは小規模な店が大多数であることも考慮しました。
Amazonがインドに進出してきた時、小規模な店を運営している人の多くは、eコマースによって売上が減るのではないかと怖れていました。
しかし、実際、Amazonは小規模な店にパートナーとして協力を求めたのです。
小規模な店は農村部に散在しており、インターネット環境が整っていないことや、唯一の買い物場所が数キロ離れていることもしばしば。そこで暮らす人々は、その店で取り扱っている商品しか買えませんでした。
つまり、選択肢が非常に限られていたのです。そこでAmazonは、小規模な店と提携し、顧客が集まる店にインターネットを開通し、そこでAmazonのウェブサイトから注文できる仕組みを作りました。
顧客が店内で商品を注文する、商品が店に届いたら顧客が取りに来る、現金で支払いをする、店側は手数料を得て残りはAmazonに渡す、という一連の流れができたのです。
地域と連携して現金で買い物を出来る仕組みを作ったことは、クレジットカードや銀行口座を持っていない大多数の人にとって革命的でした。
また、顧客の店内滞在時間が伸び、店側の売上が増えたことも報告されているようです。eコマースがまだ普及していないところでの導線作り、素晴らしいですね。
Amazonの勢いは止まらない
Amazonは今後マーケットを展開していくにあたって、このようにインド全土に住むインド人がアクセスできるようなサービスを目指しています。
現在30%以上を占めるAmazonのマーケットシェアは、2027年までは年間23%の成長率で拡大していくと見込まれています。
これにより、取引総額は700億ドル(約7.8兆円)、売上は110億ドルに達することになります。(Forbesより)
インドのeコマース市場で、Amazonはますます勢いを増していきそうですね!