初めて海外で働き始めた人からよく「現地の人とのコミュニケーションがうまく行かない」という相談を受けることがあります。
コミュニケーションがうまく行かないと、求めているものと違う資料を渡されたり、納期通りに仕事が進まなかったりする場合もあります。
現地の人とコミュニケーションを円滑に行うために意識すべきことはどんなことでしょうか?人材業界にて19年超えの経験とインド人マネジメント経験を持つミライスト代表関野がお答えします。
関野 光剛
インドに特化した就職・転職エージェントMiraist Private Limited代表。
パーソル(旧インテリジェンス)・リクルートキャリアと一貫して人材業界にて経験を積む。採用コンサルティングとして300社超を担当、またキャリアコンサルタントとして3000名超の方の転職相談に従事。前職リクルートにてグループ初のインド駐在員として、インドでのビジネスを軌道に乗せることに成功。
インドと日本の人材の架け橋になりたいという強い思いから、Miraist Private Limited起業
異文化コミュニケーションにおける「コンテクスト」の違い
現地の人とは文化的背景が異なり、異文化の中でのコミュニケーション(異文化コミュニケーション)となります。
異文化コミュニケーションでは、まず「コンテクストの違い」を認識することが大切です。
コンテクストとは、コミュニケーションでの文脈・脈絡のことです。コンテクストには、「ハイコンテクスト」と「ローコンテクスト」があり、ハイコンテクストとは、コミュニケーションや意思疎通を図るときに、前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のことを意味しています。
「異文化理解力」著者のINSEAD客員教授エリン・メイヤー氏は、日本人は最もハイコンテクストであると述べています。
というのも、日本人は意思疎通を図るとき、前提となる文脈(言語・知識・価値観等)が非常に近く、伝える努力やスキルがなくても、相手の意思を察し合うことでコミュニケーションが成立しているからです。
ハイコンテクストのコミュニケーションの特徴とは?
日本人が知らぬ間に行なっている、ハイコンテクストのコミュニケーションの特徴は、
2,あいまいな表現を好む
3,沈黙が尊ばれる
4,(論理的ではなく)感情的な意思決定が多い
等です。
現地の人とのコミュニケーションに上記のような特徴が含まれてしまうと、相手が結局どうずれば良いのか分からない状況になってしまう可能性があります。
相手に察することを期待する「甘えのコミュニケーション」ではなく、的確に物事を伝えて相手に理解してもらうことが大切です。
実際のコミュニケーションで意識すべきことは?
では、実際に現地の人とのコミュニケーションの中で、どう何を意識すればいいのでしょうか?
まず日本と海外では、言語・知識・経験・価値観・人生観、また宗教や歴史等全てが異なりますので、そこで交わされるコミュニケーションは、「通じない」ことが前提と考えるべきです。
そして、積極的にローコンテクスト(共通の文脈や価値観が少なく、言語による明確なコミュニケーションが行われること)なコミュニケーションを行っていきましょう。
また、5W1Hを活用した具体的で明快な指示により、話相手の混乱と時間のロスが最小限に抑えられるはずです。
具体的には、言うまでもない当たり前のことや、常識と思われる内容でも、はっきりと「言語化」することです。
例えば、
2,重要なことは最低3回説明する。
3,説明が伝わっていないと感じたら、表現を変えて何度でも言い直す。
4,説明をする時は必ず「目的・理由」を伝える。
上記のことを意識しながらコミュニケーションを取ることで、相手にきちんと伝えることができるでしょう。
まとめ
今回は、現地の人とのコミュニケーションで大切な「コンテクストの理解」についてお話ししました。
日本人にとって、ローコンテクストでのコミュニケーション方法は慣れないかもしれませんが、グローバルビジネスでは今後一層必要になる考え方だと思いますので、是非意識してみて下さい!