みなさんこんにちは!Miraist編集部です。
今回のMiraist Womanゲストは、HASORA 共同創業者 八田飛鳥さんです。
飛鳥さんは、2016年5月にインドでオーガニック野菜のデリバリーサービス『HASORA』を双子の姉、舞さんと一緒に立ち上げました。「食を通じ、安全と健康をお客様に届けたい」という想いから、インドで起業する道を選んだ飛鳥さん。「インドで働く女性」というカテゴリーですらまだ珍しいのに「インドで起業する女性」というのはもっと珍しい存在です。
そんな八田姉妹の活動は数多くのメディアが注目し、すでにたくさんのインタビューでお二方の活躍は取り上げられておりますが、この度ようやくインタビューを実現することができました。
八田 飛鳥さんのこれまでの経歴
千葉県出身。アメリカのカリフォルニア州立大学を卒業後、日本にて起業家支援のコンサル会社へ入社。社会起業家支援プログラム等の担当を行うなど、特にアーリー・ベンチャーを中心とした起業支援に携わる。
その後、インドに渡りリクルートインド法人(RGF)の立ち上げに従事。その後、インドの「食」環境に変化を起こしたいと双子の姉と共にHASORA(ハソラ)の立ち上げを決意。2016年5月にHASORA ORGANIC INDIA PVT.LTD を設立。インド生活5年目に突入する。
今回、飛鳥さんにはインドで起業するまでの道のりや、インドで起業してから現在に至るまでの想いについてお伺いしました!

Miraist とHASORAの合同創業パーティの様子
多様な価値観に触れ、人生を変えたアメリカ留学
―海外に興味を持ったきっかけについて教えて下さい。
きっかけは、中学2年生の時に参加したアメリカ、ワシントン州でのサマーキャンプでした。初めて親元を離れ見た海外の世界に、当時とても大きな可能性を感じ「いつか海外にいきたい!」という想いが強くなりました。その後は高校、専門学校で留学準備をし、念願だったアメリカ留学の切符を手に入れました。
―19歳で渡米したんですよね!アメリカのカリフォルニア州立大学で国際関係学を専攻していた飛鳥さんですが、大学生活はどうでしたか?
アメリカ留学の準備学校で、がっつり英語を勉強してきたつもりでしたが、待っていた現実は厳しいものでした。初日の授業は、本当に何も聞き取れず、クラスメイトが教室を去っていくのを見て、授業が終わったことを知りました(笑)悔し涙からの留学生活。とにかく必死でしたね。
アメリカの大学の授業では、自分の意見を基にディスカッションをする機会が多くあります。常に「あなたはどう思うか?」と問われました。アメリカの厳しい部分は、自分の意見をはっきり言わないと空気のように扱われること。英語を話せて当たり前の国なので、英語が苦手というのは話にならないんです。
―タフな環境ですね。その中で何か大きな気づきなどありましたか?
私は留学して1年半経ってから、授業中に発言できるようになったのですが、言語はあくまでもコミュニケーションツールであることに気づき、日本人としてのアイデンティティや価値観、思考習慣などに、人生で初めて向き合えましたね。今思えば、全力でぶつかったあの4年間があったからこそ、今の自分がいると思っています。かけがえのないたくさんの出逢いがあり、多くの方に助けてもらいました。私にとってあの留学経験が、自分の考え方や人生観を変えたと言っても過言ではありません。
―アメリカでの経験が今の飛鳥さんの礎を作ったのですね。

戸惑いながらの日本での就職活動
―カリフォルニア州立大学を卒業後は、一旦日本へ帰国した飛鳥さん。就職活動はしたのでしょうか?
はい、日本帰国後に本格的に就職活動を始めました。でも日本では「新卒ブランド」が強く、すでに大学を卒業していた私は「既卒枠」であり、当時の就職活動でなかなか苦労しましたね。同時に、2008年のリーマンショックの時期に重なったため、ほとんどの企業は採用活動を積極的に行っていませんでした。
―そうだったんですね。起業したいという思いは、いつからあったのでしょうか?
大学2,3年生の頃から、漠然と「いつかは起業したい」と思っていました。でもその時は、まだ自分がどんな事業をしたいのか、はっきりしていませんでした。
とにかく色んな人に会っていたのですが「これだ!」というものは見つけられず。就活中、ある企業の最終面接まで行ったのですが「あなたは本当にこの会社で働きたいですか」の問いに、心から返事することができない自分がいて。結局、それまでの選考結果はよかったものの、そのつまづきで不合格になったんです。その違和感を感じた経験から「きちんと自分のやりたいことをしなきゃ」と心を改めましたね。
―それは大事にしたい違和感ですね。
そうですね。結果的にはご縁があり、アーリー・ベンチャーを中心とした起業支援家支援をする企業に入社することになりました。「いつかは起業したい」というモチベーションに合う職場環境の中で、たくさんの起業家支援や起業家との出逢いを通じ、経験を積みました。

社会人3年目、初めてインドへ
―インドとつながるきっかけは?
社会人3年目に、姉が以前からインドで働いていたので、ふと会いに行こうかなと思ったのがきっかけです。これがインドとの関わりのスタートなのですが、当時はインドがすごく好き、というわけではありませんでした。旅行中いろんなインド人に絡まれたり、生活をするにもハードなことが多くあって。何をするにも「大変だな」と感じていましたね(笑)
―そこからインドで働こうと踏み切った決めては?
「大変だな」と思うと同時に感じたのが「インドはまだまだ穴だらけである」そして「たくさんのチャンスがある」ということでした。私は結構直感力が高いタイプなのですが、インドに来た時に、次自分が挑戦するフィールドはここなのではないかと直感的に感じたんです。
そこで日本の会社を辞め、インドに渡ることを決めました。1つ目の会社で勤めた年数は約3年間。会社の仕事もすごく充実していたのですが、一度しかない人生。やりたいことに全力で挑戦する自分でありたいと思いました。「迷った時には、厳しい道を選べ」という言葉に後押しされ、インドに行くことを決めました。
―不安や迷いは一切なかったのでしょうか?
不安はありましたが「やる」と一度決めてしまったので!また、姉がすでにインドにいたので安心感はありましたね。インドに渡ってからは、農村の人たちが抱える問題を解決するようなソーシャルビジネスを立ち上げることを計画し、しばらく調査期間に当てていたのですが、インドの問題はいろいろありすぎて、まだ来たばかりの私には何から手をつけていいかよくわかりませんでした。そこで一旦インドで就職して、この国のことをもっと理解していくことから始めようと決めたのです。

インドで就職。新たなフィールドを見つける
―そこから人材コンサルタントとしての仕事をスタートされたのですよね。
そうです。インドでは立ち上げ期の会社で働きたいと考えていました。人数が少なく、仕事面でチャレンジ出来る環境が良いなと思っていて。また、一緒に働く人も大事なポイントでした。
もともと父がリクルート出身で人事や人材の仕事に長年携わっていたので、自分にとって人材の仕事は身近に感じていました。そしてご縁あって、リクルートインド法人立ち上げメンバーとして採用されることになりました。
―当時の様子も教えていただけますでしょうか?
1年目はすごく小さいチームで、上司とインド人メンバーと私の3人しかいませんでした。その頃は、毎日夜遅くまで働いて大変でしたが、とても楽しかったです。入社当初、売上の数字が全然伸びなくて苦労した時期があったのですが、少しずつ結果が出せるようになって。アジア拠点の中でも、インド拠点が売上達成率No.1として結果が出せた時は、本当に嬉しかったです。
―結果に結び付けられた要因は何だと思いますか?
まずは、売上に合わせてチームの人数を増やしていったことですね。信頼関係が基盤にある強いチームを作ることを意識しました。「当たり前」が違う環境で仕事をするので、当初はメンバーとのコミュニケーションを大切にしました。
日本では言わなくても伝わることが多いですが、インドでは細かい部分も相手が納得するまで、しっかりコミュニケーションを取りましたね。途中ぶつかって、喧嘩することもありましたが、チーム内でやり方をしっかり揃えていったことで実績が伴ってきたのだと思います。

後悔しない生き方をしよう。原点に戻り、インドで起業
―HASORAを起業しようという気持ちは、いつからあったのでしょうか?
HASORAを創業する1年前くらいから悩んでいましたが、最終的なきっかけになったのは大好きな祖母が急に他界した事でした。今までずっと元気だった祖母が…と初めは受け入れられず、落ち込みました。そのとき、「当たり前だと思っている日常も、いつ突然なくなってしまうかわからないものなんだ」と猛烈に痛感したんです。
人生は短く、いつ何が起きるかわからない。であれば、後悔しない生き方をしよう。
今まで祖父母や両親が、当たり前のようにずっと与えてきてくれた「安全で美味しい食」「食を通じた幸せな時間」が私の原点だということが腹に落ちた瞬間でした。そして、覚悟が決まり、会社を退職して起業しようと決意しました。
―2016年に双子の姉、舞さんと一緒にオーガニック野菜のデリバリーサービス『HASORA』を起業された飛鳥さん。事業内容について教えていただけますか。
「安全で健康な食を通じて人々の生活を豊かにしたい」を理念に、契約農家で生産された無農薬野菜や果物のデリバリーサービスを提供しています。HASORAは、有機農家さんと消費者さんを直接繋げ、より安全で新鮮で美味しい野菜を都市部に届けています。そして、有機農家さんがより持続的に農業が続けられるようより付加価値のある農業をサポートしています。
農村と都市部を繋ぎ、新しい食の出会いを生み出し、関わる全ての人のより豊かで充実した人生をサポートすることを目指しています。2017年7月より、2時間程離れた日系工業団地へのデリバリーも開始しました。今後はオーガニックサラダやヘルシーランチ、お惣菜の提供も予定しています。

インドで起業をするということ
―インドで起業することと会社員としてインドで働くということは違いますか。
全然違いますね。会社に所属していた時との仕事の範囲が全く違います。今は、まだまだチームも小さいので、総務系から、営業、広報、庶務、人事、会計など、とにかくなんでもやらなくてはなりません。今まで経験したことのない大事な仕事も多々あり、わからないことだらけで苦労しています。
また、当たり前のことですが起業したら売り上げがないと給料はありません。会社から毎月安定してお給料が入ってくることはありがたいことです。
加えて、リソースも違います。きれいなオフィスや、車にドライバー…すべてにコストがかかっており、当たり前にリソースを割ける会社の仕組みってすごいなと、今改めて感じています。人、物、お金…すべてを自分たちで用意して、マネジメントしなくてはいけないのは大変ですね。
―今のビジネスを通じ、やりがいを感じる時はどんな時ですか。
「ありがとう」「美味しかった」という言葉をもらった時ですね。そんな些細な言葉にもすごく勇気をもらいます。自分たちが作ったサービスに対し、お金を払ってくれるお客様に対して、感謝の気持ちを感じずにはいられません。 その方達の食生活が、少しでもHASORAを通じて、豊かになり、食卓で笑顔が生まれているのなら、それは本当に嬉しいことです。
また、私たちは農村と都市部を繋ぎ、新しい食の出会いを生み出し、有機農家さんのサポートをしたいと考えています。今のインドの一般的な野菜市場では、味と安全性を追求しても野菜は高く買ってもらえません。というのも、美味しいもの(無農薬の野菜)を作ってもきちんと評価される仕組みがないからです。また、農家はギリギリの生活をしているため、少しでも収入をあげるために、薬を使って野菜を大きくしたり、腐らないように薬の液体に野菜をつけたりすることもあります。
そんな有機農家さんの販路を開拓して、Win-Winの関係が作れることにはやりがいを感じますね。更にインパクトを与えるためにも、もっと事業を大きくしなくてはなりません。
―飛鳥さんのように海外で起業する日本人女性も、まだまだ少ないですが徐々に増えていますよね。
そうですね。日本にいるとなかなか見えない部分もありますが、世界で活躍している日本人女性はどんどん増えていると思います。海外で活躍している女性は活躍の場は、実は広がっているのではないでしょうか。
私は2013年からインドで働いていますが、前と比べて20代前半でインド就職・インド転職をされる方やインターン生など、インドでも若い日本人女性が増えてきていると感じますね。

海外就職をしたい日本人女性へメッセージ
―最後に、海外就職を目指す日本人女性に向けてメッセージをお願いします!
海外に出るのはハードルが高いと感じるかもしれませんが、一歩踏み出して実際に来て見ると、来る前とは全く違う印象を持つと思います。
世界で働く日本人女性はどんどん増えてきていますし、20代のうちは勢いを持って、その一歩を踏み出して欲しいです。20代がいい理由は、柔軟性があり、吸収力が高い時期だからです。その時期に、日本とは違う環境に身を置いて、仕事をするということは、その後の価値観やキャリアに大きく影響を与えると思います。
自分の価値観が大きく揺さ振られたり、いい意味で、壊される経験は、自分の幅を広げるために、必要なこと。失敗してもやり直せるから、失敗をするのが怖いと躊躇しているのもったいないです。
絶対に一度は、海外に出た方がいい。
日本にいたら、出会えなかった素晴らしい人との出逢いや、経験。それは一生の財産になります。「やりたい」と迷っているなら、絶対やったほうが良いです。決断することは、意外とシンプルなこと。そして「やる」と決めること。
自分の心の声に従って、一度きりの人生、思いっきりチャレンジして最高に楽しんでください!

編集後記
お忙しい中お時間いただき、インタビューにご協力いただきました。
日々いろいろな選択と決断を繰り返し進んでいる様子が伝わりました。飛鳥さんのシンプルな思考法「決めたら実行する」ということは、一見簡単なように見えて難しい。実際に行動に移し、インドで活躍する飛鳥さんの姿は、日本の皆さんに勇気を与える存在だと思います。
飛鳥さん、協力して下さりありがとうございました!
*HASORAに関するインタビュー記事
安全で美味しい食を通じて人々の生活を豊かにしたい。インドで起業したHASORAの八田飛鳥氏にインタビュー!
インド:双子でオーガニック野菜を広める HASORA八田飛鳥さん
