こんにちは、Miraist 編集部です。
今回のインタビューゲストは株式会社Waris共同代表 米倉史夏さん

米倉さんは「女性のキャリア支援に携わりたい」と考え、2013年に女性の多様な生き方・働き方を創出する株式会社Warisを設立。
現在は旦那様のベトナム赴任を機に「駐妻経営者」として、ベトナム現地よりリモートワークにて経営を担っています。

まさに「自分らしくイキイキと働く」を体現されている米倉さん。
これまでのキャリアの軸やキャリアパスを広げるために大切なこと、海外における女性の働き方についてお伺いしました。

「誰もが自分らしい人生を歩める社会を目指して」起業家として歩む米倉さんの人生

共同代表の2名とのお写真(米倉さんは写真中央)

―米倉さんのこれまでのキャリア・仕事の軸を教えてください。
大学卒業後、銀行へ入行しました。その後はキャリアパスを広げるために業界・職種を変えて3社で経験を積みました。
当時を振り返ると、20代の頃は「10年後、20年後の働き方が見えない」「将来くいっぱぐれないように手に職を付けないと…」と、常にキャリアパスについて考えていたような気がします。

その後、結婚・出産を経て「本当に自分が貢献したい領域」そして「本当に力を注ぐことが出来る領域とは何か?」を真剣に考え、共同代表と共に2013年に株式会社Warisを立ち上げました。

―試行錯誤の後、Warisの立ち上げを決意された米倉さん。旦那様のベトナム赴任を機に、2019年2月からベトナムへ。
現在、ベトナムからリモートで会社の経営を担う中でどのような事を感じていますか?
私は、リモートワークは「企業・働き手双方にとってポジティブな選択肢を増やす一つの方法」だと感じています。
企業側にとっては、優秀な人材の確保が可能というメリットがあります。

例えば、ご家庭の事情や配偶者の海外赴任などにより止むを得ず仕事を辞められた方やフルタイムでの就業が厳しい方の中には、実は高学歴で経験豊富な方がたくさんいらっしゃいます。

実際に、日本人の海外駐在帯同者は世界で10万人いると言われています。

残念ながら、現在は所有ビザの制約や企業側の体制面などの理由から就業が厳しいという現実があるものの、私が出会った駐妻の方々も優秀だと感じる方が本当に多くいらっしゃいます。
しかし、リモートワークを導入する事で、企業側にとってはこうした優秀な人材の安定した確保に繋がるのではないかと感じています。

―確かにそうですね。米倉さんのように考え方を少し変えるだけで、リモートワークという働き方は企業も働き手にとってもポジティブな選択肢になり得ますね。
そうですね。
一方で、働き手にとっても(業界や職種にはよるものの)テクノロジーの発達により、PCとネットさえあれば場所を選ばずどこでも働く事ができる事が可能となりますし、キャリアの継続も出来るというメリットがあると感じています。

ー2019年より約1年間、ベトナムからリモートワークで働き、感じている課題はありますか?
正直、日本で働いている時と比べると、メンバーが働いている姿が直接見えなかったり、日本のリアルなマーケット状況を肌で感じづらくなるということは感じますね。
そのため「これらの課題をどのように改善していくか」という事を常に意識してします。

ひとつの解決策としては、(ベトナムと日本で時差はあるものの)時間を調整してメンバーと定期的にオンラインランチやオンライン飲み会を実施し、積極的に「余白のコミュニケーション」をとるように意識しています。

―オンラインランチやオンライン飲み会という取り組み、面白いですね!
ベトナムと日本で距離が離れている分、スタッフとのコミュニケーション
をより大切にされているんですね。
そうですね。
例えば、雑談などちょっとした会話は、一見直接ビジネスには関係ないように見えるものの、そういったコミュニケーションから新しいアイディアが生まれる事って意外にあるんです。
私はこれを「余白のコミュニケーション」と呼んでいます。

ベトナムと日本で距離が離れていても、こうした余白のコミュニケーションは積極的に確保するように意識、スタッフとの会話の時間を大切にしています
また、日本へ帰国した時は必ずメンバーと「対面でのコミュニケーション」を大事にしています。
例え数時間の日本滞在であっても、必ず都内のオフィスには出社していますね。

ー 現在ベトナムからリモートで経営や新規事業立ち上げに取り組んでいらっしゃる米倉さん。今後の展開についてどのようにお考えでしょうか。
最近は「とにかく、今を生きる!」という事を意識しています。
自分の将来について頭をよぎることはありますが、
今は経営者としてあえてそこにフォーカスせず、会社の経営に集中しています。
これまでの自身の経験を通じて、目の前の事にとにかく集中していたら、自然と先々の事も見えてくると信じています。

「点はいつか必ず線になる」これまでの“働く”を通じて米倉さんが感じる事

―これまでのキャリアを振り返ると、どのようなことを感じていらっしゃいますか?
この記事を読まれている方の中には、今までやってきたことに特に連続性がなく、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、私も過去に業界・職種を変え多くの経験をする中で、不安に感じていました。

当時(その時)は、「つまらない」「とにかく苦しい」と感じても、その経験が「点」となって、後から振り返ると「点」が「線」になる時って必ずあります。
私の場合、起業した時に「これまでの経験(点)が線になった!」と感じました。
そして、この「点が線となる事」は、この先々も起こるんだと感じています。

Warisを起業した時に感じた「経験が線となった」瞬間

―一見、ストーリー性を感じない経験という「点」が「線」となる。素敵な視点ですね。
米倉さん自身、「点が線となった!」と強く感じた時のエピソードを教えて下さい。
私の場合、起業した時に「これまでの経験(点)が線になった!」と強く感じましたね。

前職では、主に経営管理の仕事に携わっていました。
経営管理の仕事は数字を扱う事が多く、当時「私はこの仕事に向いていないかも…」と感じた事もありますし「将来、この仕事が何の役に立つのだろう?」と思った事もありました。
しかし、今振り返ると当時は経営管理として、常に経営者と近い立場で仕事をしていたため、彼らが経営判断をする大切な機会に触れる事が多く、今思えば貴重な経験ばかりでした。
会社を経営する立場になった今、その時の経験や知識がまさに「線」となったと感じましたね。

また、BCG時代には様々な業務を通じて「何があってもクライアントの為に尽力する」というクライアントファーストを学びました。
この学びも、現在サービスを展開する上で大切にしています。
過去バラバラだと感じていた経験や学びが、私の場合、起業・そして経営をする上で全て線となり活きていると日々感じていますね。

女性の様々な働き方:女性が海外で働く事について

会社の皆さんと集合写真(米倉さんは写真中央)

―現在ベトナムで会社経営を担っている米倉さん。
海外で働く女性の一人として、ご自身の経験を通じ、女性が海外で働く事に対するお考えを教えて下さい。
日本と海外との圧倒的な違いは、仕事だけでなく生活も全てが「違い」を意識せざるを得ない環境だということ、ですね。
海外では「日本の常識が現地の常識」ではないため、想定外の出来事が日々たくさん起きます。

私の場合は、生活においてその違いを強く感じる事が多いですね。
例えば、引っ越し当日に引っ越し先の家に行ったら、まだ前の住人が住んでいたり(笑)
海外は基本契約社会なので、最初に契約書を締結するものの、契約書通りに話が進まないことも日常茶飯事。
これはあくまで一例ですが、このようなことは仕事の場でも同じくらい起きています。

そのため、常に「こちらの常識はあちらの常識ではない」ということを念頭に置きながら日々過ごしています。
正直、時には理不尽に感じる事もありますが、それを受け入れなきゃいけない。そういうことの連続だと思いますね。

これまで常識と思っていた日本との違いに直面する経験を通じ、日本との違いを理解そして受け入れる事が出来ていくと思います。
また、その経験を通じ、現地人へのマネージメント力や交渉力、適応能力が培われていくのではないでしょうか。
その経験こそが、自身のキャパシティを広げる事に繋がっていくと思います。

自身の価値観が変わった時に「いかに自分でチャンスを作り出せるか」
そして「選べる選択肢がいかにあるか」

―米倉さんの考える「女性の理想の働き方」とは?
女性には結婚、出産など多くのライフイベントが多くあります。
環境や価値観の変化が起こった時、その時の自分にあった「働き方の選択肢」があるという事が、女性の理想の働き方ではないでしょうか。

私の場合、子供を産んだ時に一番価値観が大きく変わりましたね。
それまではがむしゃらに仕事に取り組んでいたものの、出産後は「限られた時間の中で、自分が誠心誠意・全ての力を注ぎたい!という領域に自分の時間を注ぎたい」と考えるようになり、Warisを起業するに至りました。

今は人生100年時代。
この長い人生において、自身の価値観が5.6回変わることって起こりえる事だと思うんです。
自分の価値観がガラリと変わった時に、「自分でチャンスを作り出せる」もしくは「チャンスを掴める」状態であるために、20代・30代の時にいかに自身のキャパシティを広げておくかが大切だと思います。

20代・30代に「どれだけ自分のキャパシティを広げられる経験をしたか」
その後の女性の選択肢の幅が決まる

ー「20代・30代で自分のキャパシティをどれだけ広げられるか」が今後の選択肢の幅に繋がるんですね。自分のキャパシティを広げるためには具体的にどうすればいいのでしょうか。
昭和っぽいかもしれませんが、すごくシンプルに言うと「20代・30代の内に、どれだけタフな環境を自ら選び、逃げずに乗り越える事ができたか」が、自身のキャパシティを広げる上で大切な事だと感じています。
特に、社会人のスタートとなる1社目の環境は、その後の基準にもなり得るので大切だと思いますね。

山に例えると、1社目の“山の高さ”が、その後乗り越えられる山の高さを決める。
「自分にはちょっと無理かな?」と感じるぐらいの山を選ぶ方が、成長にも繋がるのではないでしょうか。
一度「乗り越えられた!」という成功体験を得ると、同時に自己肯定感も芽生えますし、「あの山を乗り越えられたから、きっと次の高い山も乗り越えられる!」と、いう成長サイクルが生まれると思うんです。

繰り返しになりますが、20代・30代でどれくらい自分のキャパシティを広げられる経験ができたか、が大事です。
その経験が、その後の30代以降の選択肢の幅を広げてくれます。
だから、20代・30代の方には、将来の選択肢の幅を広げるためにも、是非積極的に「やりたい事」へチャレンジして頂きたいですね。

女性がキャリアパスを広げるために「自分ブランド」を創る

ー20代・30代を振り返り、米倉様自身キャリアパスを広げるために意識していた事はありますか?
20代の頃は「自分ブランドを作る」ことをすごく大切にしていました。
「自分ブランド」というと、少し大きなことのように感じますが、スキルに関連するものだけでなく、自分のキャラを確立していく事でもいいんです。

例えば、Warisを起業する前に所属していた会社では、新規事業部に所属していたものの、当時の私は新規事業に関するスキルは全く持ち合わせてなく、苦しんだ事もありました。
その中で「今の自分にできる事が何だろう?」と考え、「米倉さんと言えば、とにかく行動力ある人!」という自分ブランドを創ろう!と決めました。
その後は、多くのイベントに参加してはとにかく名刺を獲得してくることを徹底し、新規クライアントの発掘に専念しました。

そこから、「米倉さんと言えば、あの名刺集めの人だよね!行動力あるよね!」と、自分ブランドが認知され始め、そこからチャンスを掴めるようになった気がします。

ー「自分ブランドを作る」という考え方、すごく素敵な考え方ですね!
一つ一つ自分のできることから自分ブランドを作り、それがチャンスに繋がり、将来的に選択肢の幅に広がってくるんですね。

そうですね。
キャリアパスの可能性を広げるひとつとして、自分の得意を作って「自分ブランド」を周りに認知してもらう、という事から始めるのもいいのではないでしょうか。

読者の中には「特に資格やスキルが無くて不安…」と感じている方もいるでしょう。
例えば、スキルはなくとも、がむしゃらにとびこんだり、どう思われるかとか気にせずやったり…。「自分には何もない」と思った時に、まずは行動する事で徐々に自分が周りに認知されていくと思います。

私の場合、この自分ブランドの積み重ねで、少しずつ「この領域だったら米倉さんにお願いしよう!」という風に、仕事の幅がちょっとずつ広げていく事が出来ました。

「自分ブランドを創る事」は誰でもできます。
壮大な何かではなくて、ひとつひとつの小さな事から、自分のブランド作りは始まります。
そうすると「あの人はこういう事が出来る人だからお願いしてみよう!」と自然と自分にチャンスが舞い込んできますよ。

インド就職を目指す日本人女性へメッセージをお願いします!

これまでと180度違う「新しいスタートを切る」って、凄く大変な事だと思います。
海外就職やライフイベントなど、大きな決断であればあるほど、ついメリット・デメリットを考えてしまいますよね。

私もベトナムに来る時は、「それぞれのメリット・デメリットって何だろう?」と表グラフにしてまとめました。
でも、書き出したところで「So what?(だから何だっけ?)」なんですよ。
メリットデメリットも大切ですが、それ以上に「いかに自分がときめくか」が大切な時もあるのではないでしょうか。

例えば、海外就職の場合、多くのメリット・デメリットがあると思います。

もしも、新しい決断で悩んでいるならば
「もし私がそこへ行ったらどう感じるだろう?」と想像した時のトキメキや、
「もしこのチャレンジをしたらどんな自分になれるだろう?」と想像して笑顔の自分がいるか?という〈ときめき〉を軸にしてみてはいかがでしょうか?

最後にひとつ、私が大切にしている言葉を読者の皆さんへお届けしたいです。
20代の頃に、尊敬する先輩から頂いた言葉でもあり、私自身今でもずっと大切にしている言葉。

「チャンスの神様は前髪しかないよ」

少し、想像してください。
あなたのもとへチャンスの神様が近づいてきます。その神様は前髪しかありません。

その時、あなたはどうしますか?

もしもためらわずに、あなたがしっかりと神様の前髪を掴む事が出来たなら、あなたはチャンスを手に入れる事ができます。
もしも「もうちょっと後でもいいのかな…」「失敗したらどうしよう…」ともし悩んでしまったら…。
ためらっている間に、チャンスの神様は去ってしまいます。

この神様には後ろ髪がありません。
なので「今がチャンスだ!」と感じた時にぱっと掴まないとチャンスの神様は過ぎ去ってしまい、もう二度とチャンスを手に入れる事が出来なくなってしまう、という例えです。
個人的に、まさにこの言葉はその通りだなと思い、経営者となった今でも大切にしています。

チャンスの神様は前髪にしかいないので、あっトキメクと思ったらつかんでください。

ときめきを大切に、「自分らしくイキイキと生きる」事が出来る人生を歩んでくださいね。

編集後記

インタビュー中、ずっと笑顔で優しく語って下さった米倉さん。
一つ一つの言葉を丁寧に、優しくも力強く語る姿がとにかく印象的でした。

記事の中で米倉さんもお話されていたように、女性は結婚、出産など多くのライフイベントを迎え、その度に環境や価値観は変化します。その変化に対し、臨機応変に柔軟に自分らしく生きていく米倉さんの姿は、まさに日本女性に勇気を与える存在だと思います。

ご自身の将来やキャリアに悩んでいる方も、「ご自身のキャパシティを広げるには、今何が必要か」しっかりと向き合い、納得感ある選択を積み重ねて頂きたいと思います。
米倉さん、今回は貴重なお話をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました!