インドにおける日系・インド系・多国籍系企業 で働く従業員の意識とは

こんにちは!Miraist 編集部です。

2019年10月17日(木)デリーで開催されたインド日本商工会(JCCII)主催の第289回三木会にて、ミライスト 代表関野が「日系・インド系・多国籍系企業 の従業員意識の比較調査」についての調査結果を発表しました。

インド日本商工会(JCCII)とは、インド首都圏を中心とした地域及び一部
各地域を含む日系企業の団体の名称で、デリーでは月に一度日系企業がインド市場をより盛り上げるため、情報交換やスピーカーによる講演が行われています。

今回の会合で関野は約200名の日系企業の方々の前で講演を行いました。
日系企業の枠を超えて、インドにおける多国籍企業との調査を行ったのは初の試みであり、「インドにおける、日系・インド系・多国籍企業で働く従業員の意識」について興味深い内容となっております。

今回の記事では、講演でご紹介した内容についてお伝えします。

インドで奮闘される皆様にとって、また今後インドへ進出を検討されている方々にとって、少しでもお役に立てば幸甚です。

下記より全資料もご覧いただけます↓
https://miraist-india.com/wp-content/uploads/2019/10/MIRAIST_presentation.pdf

 

 

今回の調査の趣旨

インド進出を目指す日系企業は増加の一途であり、ますますインドにおける経営管理・人事労務管理の重要性が増しています。

しかし、同じ日系企業の範疇での情報交換・意見交換はあっても、インド企業や、多国籍企業との比較というのはあまり行われていないと思われます。

インドという難解な市場を前にして、日系企業のみの考え方だけではなく、インド企業や多国籍企業の経営方針や人事労務管理、社員の意識や考え方を比較し、理解することにより新しいアイデアが生まれれば、日系企業はインドにおいてさらに活躍が期待できるのではないかとの思いから、本調査結果を共有をしたいと思ったのが背景です。

 

調査概要

調査概要

 

今回、オンライン調査ツールSurveyMonkey.comを使用して、適切な従業員からデータを収集しました。

調査は2019年4月10日から2019年5月25日にかけて行われ、1813社の従業員から公開形式でオンラインアンケートに回答し、1307人のデータを収集しました。


【免責事項】

このデータは上記調査参加者から取集した結果であり、これらの分析はその基礎データから行われています。
その為、国、グループ全体または個々の会社の状況を表すものではありません。

また当該情報に関して、万全を期しておりますが、正確性、最新性、有用性等その他一切の事項についていかなる保証をするものではありません。

 

 

【1】社員が退職を考える主な理由

社員が退職を考える主な理由


①第1位: 自分の給料が市場平均よりも低いと判断した場合(52%)

インドでは社員は基本、社内外を問わず給料の情報共有を行います。
企業は同業界における競合他社の給与情報を定期的に調査し、自社の給与設定を競争優位的に設定していく必要があります。

 

②第2位: キャリアステップが不明瞭な場合(39%)

日系企業社員が会社に期待をしているのは、自分自身のキャリアの向上を見込めること。日系企業では、実務を通じ「カイゼン」「5S」「JIT」等、他インド企業や多国籍企業でも評価されるキャリア構築を期待しています。

※2の「新しい学びやトレーニングの機会がないと感じる場合」も28%と高い数値を示しているのは、社員は日系企業に当該機会を期待して入社しているのでこれが実現しない場合は、長期的な就業は難しいと判断する可能性が高いです。

 

③第3位: 転職先から、より高いポジションを得られる場合(37%)

インド人にとってはポジションも給与に並ぶ大切なファクターです。
日系企業の多くは、メンバーマネジメントをする立場を管理職と考える場合が多いが、インド企業の多くは、経験年数や実績に応じてメンバーがいなくとも職階としてより高いタイトルを与える場合が多いです。

社員の突然の退職表明を避けるためにも、いつ次のポジションに昇進ができる可能性があるか、どういう状態になればそれは実現するのか等を評価制度に基づいて、会社は評価面談や1on1 meetingなどを通じて定期的にコミュニケーションを取ることが推奨されています。

 

 

【2】給与増加による転職検討をするか

給与増加による転職検討をするか

 

質問「他社からの10%給与UPで転職を検討しますか?」

①「はい:16%」と、多国籍企業の15%と並び低い結果。
②「いいえ:61%」と高い数字は、10%の給与増加には関心がないという意思表示。

 

これは、

次の資料にもでてくる、日系企業の定期昇給率と大きく関連性があります。10%という昇給率は日系企業においては特別な数字ではなく、多くの社員にとっては転職のインセンティブにはならないということです。

 

【参考:インド人の転職観について】

インドでは給料が上がる機会があれば転職を模索するというのが一般的な考え方。一社に居続けると物価上昇率に合わせ毎年平均10%前後の昇給が一般的だが、転職だとそのタイミングでの給与提示が20~30%程度の上昇が期待できる。

また、矛盾するように聞こえますが、インド人がもう一方で重要視していることが「雇用の安定性」でもある。20代のうちに転職を重ね、自身の市場価値を最大化し、30代後半を過ぎたあたりから、次は長く安定的に働ける場所を探します。40代以降は転職の機会が格段に減るという事情も背景にある。

 

【3】昇給率比較

昇給率比較

 

①日系企業

昇給率5-10%が35%、昇給率10-15%が33%と、約7割の企業が10%を中心に昇給をしている。昇給率5%以下は12%しかなく、インド企業や多国籍企業と比べてもボラティリティが小さいです(ある種の中心化傾向)。

【参考:中心化傾向】
・人事評価時に評価者が陥りやすいエラー。両極端な評価を避け、標準的な評価になる傾向を指す。


②インド企業

昇給率5%以下が31%と最も多く、一番ドラスティックに昇給率を決定しています。全体的には左側の低い昇給率を頂点に、10-15%で山はあるものの、右側に下降していく形。一方で、昇給率25-50%も4%、50%も1%と、成果を上げた社員をしっかりと昇給をさせている一面もあります。

 

③多国籍企業

昇給率10-15%が31%と一番多く、ボリュームゾーン。日系企業に似ているが、昇給率5%以下も23%と、日系企業よりはボラティリティが大きくなっています。

 

【4】昇給による満足度

昇給による満足度

 

①前のスライド【3】では、日系企業の昇給率は10%を中心とした、相対的に高めの昇給率でした。しかし、増加した分に対する満足度は11%で最も低いという結果となりました。

②「どちらでもない」が50%であり、はっきりと意思表明できない状態。

しかし、相対的に高めの昇給率にも関わらず、なぜ日系企業の社員は「満足している」という社員の比率が少ないのかを考察すると、一つの理由としては、前述の「中心化傾向」により、優秀な社員もそうでない社員とほぼ同じ昇給率の範囲で評価されており、優秀な社員にとっては不満が残る可能性があるということです。


一方で、優秀ではない社員にとっては居心地の良い就業環境になっている可能性が高く
、いわゆる「※2-6-2の法則」の下位や中位社員にて、ほぼ組織構成されてしまうという危惧があります。

そうなるとますます優秀な社員が出ていく悪循環に陥るので、早急に優秀な社員へのリテンションのため、納得感のある給与制度・人事評価制度を構築・運用することが必要となります。

 

※【参考】「2-6-2の法則」:人材を組織への貢献・実績度合いで分類した割合。
・上位20%:組織貢献しているリーダー的優秀社員
・中位60%:平均的に貢献している普通社員
・下位20%:モチベーション低く貢献度が低い社員

 

【5】自分が企業で活用されていると思うか

自分が企業で活用されていると思うか

 

①自分自身が企業で最大限活用されているのか、との問いには、日系企業社員の52%は「はい」と答えたものの、インド系・多国籍企業と比較し、低い数値となりました。

②「いいえ」は日系企業社員は48%と約過半数の社員が、「自分のスキルが十分に活用されていない」と答えました。

この状況は会社にとっても勿体無い状況と言えます。

前述の通り、納得感のある人事評価制度を策定し、オフィシャルな評価ミーティングから、よりカジュアルな1on1ミーティングまで、できる限りのコミュニケーション機会を作る、そして現在の職務内容の明確化をした上で、今後のキャリアパスについて話し合うことをおすすめします。会社からの期待を社員にしっかりと伝え、そのフォローを定期的に行うことが望ましいです。

 

【6】労働力に対する女性比率

労働力に対する女性比率

 

日系企業は15%と、インド系30%、多国籍企業28%とは約2倍の開きとなりました。平均就業女性比率の23%を日系企業は切っている状況が浮き彫りになっています。

多くのインド系・多国籍企業では、女性管理職を増やし、彼女たちがロールモデルになることで、全体的な女性社員比率を高めることに繋げています。

 

【参考】

大卒以上の管理職率では、日本の30代男性39%に対して、30代女性は12%。一方インドでは、30代男性57%に対して30代女性は47%と、日本や他アジア諸国に比べても割高な比率です。

この傾向は特にインド都市部で顕著で、ダブルインカムで比較的経済的に余裕がある夫婦は、積極的にメイドサービスなど活用し家事負担を軽減したり、IT 業界ではフレックスタイムや在宅勤務を積極的に導入する等、女性が活躍しやすいフレキシブルな就業制度が後押ししていると思われます。

インド人女性経営者も多く、有名な人としては米アマゾン取締役(前ペプシコ社CEO) インドラ・ノーイ氏などが挙げられます。

 

 

【7】企業が付与する出産休暇期間

企業が付与する出産休暇期間

 

①企業が付与する出産休暇期間として、12週間という一般的な付与日数ではほぼ横並びですが、26週間(※The Maternity Benefit Act)を付与する割合が多い多国籍企業は他のグループと比べ、よりコンプライアンスに準拠しています。

②分からないと答えたグループの中に、実際には多くの社員が該当企業(社員数10名以上)が26週間の出産休暇を提供する義務があることを認識していない可能性があり、当該法律内容がまだまだ周知されていないと思われます。


女性は転職を考える時、組織の規模ではなく、出産に対して会社がどれだけ理解があるか、および実際に出産休暇が適切に提供されているかを判断材料にしています。当該法律を認識している女性社員の採用を考える上で、企業におけるコンプライアンス遵守は大事なファクターです。

【参考】
※The Maternity Benefit Act:社員数10名以上の企業は、女性従業員の妊娠時に26週をMaternity Leaveとして付与しなければならない。2016年施行。

 

【8】セクハラ防止への社員の認識有無

セクハラ防止への社員の認識有無

 

①セクハラ防止への社員の認識は、日系企業は相対的には高いものの、約3割弱に留まっています。

②61%分からないと答えた社員への教育を早急に図る必要があります。

【参考】
セクハラ防止法 The Sexual Harassment of Women at Workplace (Prevention, Prohibition, and Redressal)Act.2013

この法律は、従業員10名以上の在インド企業すべてが対象となる。女性社員は、正社員・契約社員・派遣社員・インターンなど働き方は関係なく適用。

対象企業は、社内にInternal Committee(IC)の設置が義務付けられる。ICの構成員としては最低4名が必要で、50%以上は女性である必要がある。Chairpersonは女性でなければならず、社外NGOなどの専門家も必要になる。当該ICメンバーにて、4半期に1回は委員会の開催が推奨されている。

また、社内規定にもセクハラ防止に関するポリシーを入れる必要があり、そのポリシーをしっかりと社内教育・浸透させるためのオリエンテーションや定期的なトレーニングを行うことも義務付けられている。

セクハラが社内で起こった際にICが設置されていないと、違反として当局から指導される。企業が違反をしてしまった場合は、50,000ルピー以下の罰金が科せられる。二度目になると事業免許の取り消しなど、より深刻になっていく。

しっかりと社内体制を整備しておかないと後手後手になり、解決がより困難になっていく可能性がある。逆に、社内整備を進め自社がしっかりとセクハラ対策をしているということで、自分の所属企業はコンプライアンスを遵守しているという認識を持ってもらい、社員のロイヤリティを上げることに寄与できる。

 

 

【9_1】 社員による不正行為の認識

社員による不正行為の認識

【9_2】社員による不正行為を報告しているか

社員による不正行為を報告しているか

 

①社員による不正行為としては、日系企業ではパワーハラスメント30%と、(上級職の)職権乱用が16%と、いずれもシニアポジションによって行われている事象が多いです。
上級職が行うことによる組織のモラルハザード、離職率の増加、生産性低下等の負の連鎖が起こる可能性が高いです。

 

②社員による不正行為を報告しているのは、日系企業で17%。インド系32%、多国籍企業27%と比較しても低いです。

 

③45%の日系企業の社員はどうすればよいかわからないという回答(誰に何をどう報告すべきか分からない)。

 

不正行為に対する管理は、あらゆる組織の事業継続性を確保するために重要です。
不正行為を起こさせないための定期的な社員教育・研修、信頼性の高い内部通報制度(第三者機関へのホットライン設置、また報告者の秘密や立場を守る等社員の心理的抵抗を無くす仕組み)の構築、またその報告方法の周知徹底等が挙げらます。

 

 

【10】企業理念、ビジョンを社員が認識しているか

企業理念、ビジョンを社員が認識しているか

 

①企業理念・ビジョン等の認識についてはちょうど50%との結果。

 

まとめとして、企業におけるハラスメント/不正行為は、企業理念・ビジョン等上位概念に紐づいている行動規範(コンプライアンス)を、社員が認識しているかに大きく影響を受けています。

社員一人一人の所属会社への企業理念・ビジョンへの理解がベースとしてあり、その理解の上での行動規範があります。
社員にそれらの概念をしっかりと理解させるためにも、経営側は定期的な社員教育・研修やイベント開催、ハンドブック作成、トップからの社員向けビデオメッセージ作成、朝礼や社内メールでの定期発信など、様々な方法があります。

それら継続的な努力により、「企業理念-ビジョン-行動規範」の一貫性を社員に持たせることができると思います。

企業理念

 

【参考】
1企業理念:企業の目的や存在意義、使命を表現した不変的な考え
2ビジョン:事業を通じて成し遂げたい将来のあるべき姿
3行動規範:企業理念実現のために、社員が大切にすべき行動における価値観

 

 

発表を終えて

講演を聴いて頂いた方々に、改めてお礼を申し上げます。
講演後、多くの方々からコメントを頂きました。

 

「これまで日本企業同士での情報共有が中心で、インド系や多国籍企業についての比較をしてこなかったので、非常に興味深かった」
「インド人社員の転職についての理解が深まり、参考になった」
「改めて人事制度設計の必要性を痛感した」

 

など、ありがたいお言葉を頂きまして、大変嬉しく思います。

今後も人材という面から皆様のお役に立てますように尽力いたします。
人材紹介から人事コンサルティングに関して、ご不明な点がございましたら、いつでもいつでもお気軽にご相談下さいませ。


ミライスト代表関野

 

ミライスト代表関野

 

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