インドで生活するのに欠かせない交通手段、タクシー。

男性も女性も、お年寄りも子供も、学生もビジネスマンも、誰もがタクシーを使います。

―みんなが使う公共の物だからこそ、
みんなにメッセージを伝える手段にもなりうる。―

今回は、デザインでタクシーを彩るアートプロジェクト「Taxi Fabric」をご紹介します。

Taxi Fabricのタクシー

ムンバイを拠点にするデザイナーの想い

インド人デザイナーのサンケット・アブラニ(Sanket Avlani)さんは、インドのタクシーをポップにしたら面白いのではないか?と思い付き、2015年4月にムンバイを拠点にこのTaxi Fabricというアートプロジェクトを始めました。

彼は大学ではエンジニアリングを学んでいたものの、独学でグラフィックデザインを学び、大学卒業後にはデザイン・アートの道に進むことを決めました。
卒業してからはデザイン系の会社で働き、その後は広告代理店でアートディレクター兼デザイナーを5年ほど務め、今はロンドンでデザイナーとして活躍しています。


「最初はドライバーや乗客からいい評価を得られるなんて思ってもみませんでした。思いつきで始めたこのプロジェクトが、こんなにも多くの人の心に響くとは
とサンケットさん。(The City Storyより)

デザインがいかに生活に影響を及ぼすか、インドではその重大さがまだ理解されていません。サンケットさんは、その現状を打破するべく、自身の思いに共感したアーティストを集め、タクシーのシートと天井は、彼らの思いを表現するキャンバスとなったのです。

また、 Taxi Fabric のコミュニティが若いデザイナーたちのプラットフォームにもなっています。

社会問題を提起するデザイン

また、タクシーを女性のエンパワーメントを表現する場として捉え、女性の権利を訴えかけているデザインも存在します。

イラストレーター兼グラフィックデザイナーであるクルティカ・スサラ(Kruttika Susarla)さんは、‘Celebrating Women Leaders’ というテーマで、タクシーをデザインしました。

Celebrating Women Leaders

「リーダー」と聞いて男性ばかり連想しがちですが、実際多くの語り継がれるべき女性のリーダーもいることを知ってほしいと思い、このデザインを施したようです。

教科書やニュースに取り上げられていなくても、評価されるべき女性がいることを、このタクシーのデザインを通して伝えようとしているのです。

Celebrating Women Leaders

 

男性中心の社会に異議を唱え、人生をかけて闘った勇気ある3人の女性活動家。
左から、Soni Sori(ソニ・ソリ),  Irom Sharmila(イロン・シャルミラ) と Savitribai Phule(サビトリバイ・ピュレ)です。

 

Celebrating Women Leaders

 

女性が拳を空に掲げる姿が、力強く描かれています。

Win-Win-Winな関係を生み出したタクシー

デザインが施された後、「タクシーで乗客との会話が増えた」とドライバーから絶賛されているこのプロジェクト。

今までは、特に会話もなくただ乗るだけだったタクシーの中で、乗客との会話が生まれるようになりました。ドライバーからTaxi Fabricの方に、「自分のタクシーにもデザインを施してほしい」との連絡も増えたんだとか。

Taxi Fabric

ドライバーにとっては、乗客との会話が増え、運転するのが楽しくなります。

デザイナーにとっては、タクシーという公共交通機関が、自分の描いたアートを表現する場となります。

そして乗客にとっては、いつも使っているタクシーが素敵なアート作品になったことで、移動時間にデザインを楽しめます。

これぞ、win-win-winのデザイン

世界的アーティストのミュージックビデオにも!

また、イギリスで結成された、世界的に有名なアーティスト Cold Play のミュージックビデオ『Hymn For The Weekend』に、Taxi Fabricのタクシーが使われたことでも話題になりました。

他にも様々なデザインが!

Taxi Fabric

なんとも壮大なタージマハル!

 

Taxi Fabric

天井を埋め尽くす言葉を読んでいたら、すぐに時間が過ぎそうですね。

 

Taxi Fabric

カップルで乗ったら楽しそうなデザイン!

 

Taxi Fabric

とっても鮮やか!おじさんの顔、キマってますね。

 

Taxi Fabric

モノクロ × モダン。シンプルなのもいいですね。

 

Taxi Fabric

オートリキシャにもデザインが。

 

Taxi Fabric

ムンバイではタクシー1台で1日あたり、平均30人ほどを乗せるようです。

毎日、ドライバーと乗客との間で常に新しい会話が生まれていると思うと、わくわくしますね!

デザインは、コミュニケーション

「今インドにある社会的問題がなくならないのは、”コミュニケーションの不足” が原因のひとつだ」とプロジェクトを始めたサンケットさんは言います。

コミュニケーションを取ることで、ひとりひとりの行動や考えが、少しずつよい方向に変わっていき、社会全体がよりよいものに変わっていく。このプロジェクトは、社会課題を解決する第一歩となりうるのです。

人々のマインドセットを変えるきっかけになる。社会問題について考える時間になる。その小さな会話が生まれる場を、Fabric Taxiはデザインやアートを通して、提供しています。

このタクシーのデザインによって、インドの明日が少し、よくなるかもしれませんね。

 

参考
All Photo by Taxi Fabric Facebook
GULF NEWS
Taxi Fabric
THE CITY SOTRY