インドへの旅行・赴任が決まり不安になるのが感染症などの病気について。

今回は、「インド渡航前に予防接種はすべきなのか」また「どの種類の予防接種が必要なのか」についてご説明します。

インド渡航前に予防接種は必要か?

まず、結論として
インド渡航前に予防接種は “しておくことが望ましい” です。

インド入国にあたり日本人に義務づけられている予防接種はありません。
しかし、もし何かしらの病気にかかったとき、予防接種を受けていれば自分の身体を守ることができるかもしれません。

インドに赴任される方には、急に辞令が出て予防接種を受ける時間がない方もいらっしゃると思います。
予防接種が完了せずにインドに渡航する場合でも、一時帰国した際、もしくはインドの信頼できる医療機関で残りの予防接種を受けることが望ましいです。

インド渡航前に受けておきたい予防接種とは?

次に在日本大使館が推奨する予防接種について紹介します。

◎:インド渡航の際に、是非接種を受けていただきたいもの
◯:インド渡航の際に、接種が望ましいもの
△:目的地や旅行の形態に合わせて検討すべきもの
X :不要なもの 

インド渡航前の予防接種出典:在インド日本大使館

1つずつ紹介していきます。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスは、感染症の患者の便や嘔吐物に含まれる病原体が他者の口腔から感染し伝播します。
潜伏期は2~6週間で、治療法は安静や対症療法が中心です。多くは1~2か月の経過で回復しますが、稀に慢性化し死に至ることもあると言われています。

【症状】

発熱、倦怠感、食思不振、嘔吐などの消化器症状。

【予防接種】

2~4週間隔で2回接種し、24週後に3回目を接種。
一般的に3回接種すれば5年程度は効果持続。

※海外製A型肝炎ワクチンの場合、2回接種。

B型肝炎

感染経路の大部分は、B型肝炎ウイルス慢性感染者からの性感染と考えられています。
その他には、未滅菌の医療器具やカミソリ、歯ブラシ、輸血などの血液を介して感染しますので、歯医者や病院で医療器具を使用される場合は殺菌消毒がされているものかの確認が必要です。

【症状】

比較的緩やかに、徐々に発病。
微熱程度の発熱、食欲不振、全身倦怠感、嘔吐、右季肋部痛、上腹部膨満感など。

【予防接種】

4週間隔で2回接種し、20~24週後に3回目を接種。
一般的に3回接種すれば5年程度は効果持続。

※海外製B型肝炎ワクチンは3〜4回接種

破傷風

破傷風は破傷風菌による感染症です。破傷風菌は主に土壌の中に生息し、動物の腸の中や糞にも存在しています。
破傷風菌は小さな傷からでも侵入し、中には傷が見当たらないのに感染する場合もあると言われています。極めて少ない量の菌でも侵入して増殖すれば容易に発病し、今でも死亡率の高い病気です。

【症状】

約80%の確率で全身的な症状(痙攣、呼吸困難、脳炎など)がみられる。
中には呼吸筋の麻痺により窒息死する可能性もある。

【予防接種】

3~8週間隔で2回接種し、初回投与の6ヶ月以降(標準として12~18ヶ月後)に3回目を接種。
※1968年以降日本では、小児の定期予防接種に組み入れられています。
そのため、定期予防接種で12歳の時に接種していれば、20代前半までは免疫がありますが(約10年間の免疫持続)、最終接種から10年経過した方は、追加での予防接種が望ましいです。

日本脳炎

日本脳炎ウイルスは水田や沼地等の大きな水たまりに発生する蚊(日本では主にコガタアカイエカ)に刺されることによって感染・発症します。
雨季(インドの場合7月〜10月)には蚊の活動が活発になるので注意が必要です。

【症状】

高熱・頭痛・嘔吐・意識障害やけいれん等の症状を示す急性脳炎。

【予防接種】

1~4週間隔で2回接種し、その1年後に3回目を接種。
10年ごとの追加接種が望ましい。

腸チフス

食中毒の原因でもあるサルモネラの一種であるチフス菌が水、食物を介して感染し、発症します。

【症状】

高熱、除脈、便秘または下痢、時に腸出血、腸穿孔をおこすこともある。

【予防接種】

1回接種。3年程度効果は持続。

狂犬病

狂犬病に感染した犬、猫、キツネ、アライグマ、コウモリなどの哺乳類動物に咬まれることで感染します。
唾液のついた爪で引っ掻かれても感染する可能性があると言われています。発症するとほとんどの確率で死に至るので、急速な治療が必要です。

事前に予防接種を受けず、咬まれた場合には24時間以内に狂犬病ワクチンの接種が必要です。事前に予防接種を受けている場合も、病院でのワクチン接種が必要です。

【症状】

発熱、頭痛、全身の倦怠感、嘔吐

【予防接種】

4週間に3回接種。

※ポリオ

2014年3月にWHOはインドをポリオ清浄国に認定。したがって、インド渡航に際してポリオの予防接種の必要はないと言われています。

デング熱とは?

もう1つインドで気おつけたい病気、デング熱
デング熱とは、デングウイルスを持った蚊に刺されることによって起こる感染症です。

症状は主に発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、皮膚発疹です。治療においても予防接種や特効薬はなく、対処療法のみとなります。

デング熱にかからない為には、虫除けスプレーなどで、肌を蚊から守ることが重要です。
虫除けスプレーは、日本で買ってインドに持ってきたり、インド現地でも手に入れることができます。

普段からできる予防法とは?

予防法

予防接種を受けることで感染症になるリスクは抑えれますが、日本とは違った環境にいることで体調不良になることもあるかと思います。

以下に普段から簡単にできる予防策についてご紹介します。

・トイレを使用した後や食事前には、しっかりと手洗い、消毒を行う。
道端にいる動物(犬や猿、牛)には近づかない。
・自炊をする場合はしっかりと加熱処理を行う。
・水道水は飲まず、水を飲むときは市販の水を購入する。 

まとめ

今回は、「インド渡航前に予防接種はすべきなのか」また「どの種類の予防接種が必要なのか」についてお伝えしました。
インド渡航前に予防接種はしておくことが望ましいですが、予算や渡航期間を考慮して検討することが必要です。

インドへの赴任の場合は、内定先の企業から予防接種を指示されることもあると思いますが、ご自身で判断しなくてはいけない際にこの記事が参考になれば幸いです。

*記事を執筆するにあたり細心の注意を払っておりますが、当コンテンツのご利用につき何らかの不都合や損害が万が一発生したとしても、何らの責任を負うものではありません。

参考

在インド日本大使館
外務省
厚生労働省検疫所
予防接種サイト
感染症・予防接種ナビ